知恵袋の知恵ノート77
「東野圭吾 その作品の魅力を考える。」
東野圭吾の全作品を読みましたので、
東野作品の魅力について少し書いてみたいと思います。
この知恵ノートは作品のネタバレも含みますので、
読んでいない方はご注意ください。
ちなみにネタバレ無しの全作品紹介は以下になります。
全作品ランキングの補足と感想は
このページの一番下にあります。
文章は下手なので、
中学生の読書感想文程度に思ってください。
東野圭吾の魅力@
「読みやすい文章」
東野圭吾が他のミステリー作家と比べて
格段に優れているのが、
文章がとても読みやすいということ。
わかりにくい表現や無駄な文章もなく、
登場人物が無意味に詩的にふけることもない。
表現や、人物の特徴がハッキリしていて、
その行動も理路整然で無駄がなく、
読んでいてとてもスッキリする。
読書カテゴリーで読書が好きな女子高校生が
東野圭吾は稚拙な文章だと書いたのを
見たことがあるけど、
自分みたいな本を読むのが苦手な人間からすれば
これで十分だし、読みやすくて
助かるとしか思わなかったりする。
「容疑者Xの献身」や「流星の絆」など、
サクッと読めて本当に気持ちが良いのだ。
東野圭吾の魅力A
「わかりやすい話」
たとえばいろんな小説を読んでいて
こういう経験はないだろうか?
「最後犯人はどうなったんだ?
死んだのか逃げたのかわからない・・・」
「あのトリックの意味がわからない・・・」
「あの言葉の意味はなんだったんだ・・・」
「え?この話続くの・・・?」
こういうことがほとんど無いのが
東野圭吾の魅力だ。
犯人が最後どうなったかはしっかり書かれているし、
トリックの大半は複雑ではないし、
物語に中途半端な言葉は残さない。
もちろん作者が登場人物に愛着ができて、
続編に続いてしまうことなどない。
今続いているシリーズも
「続編はまったく考えていなかった」と
作者が平気で言ってしまうくらい、
基本的に作品はその場限りだ。
ガリレオシリーズも加賀恭一郎シリーズも
シリーズと言いながら、
各巻がほとんどつながっていなくて
どれからでも読める。
ミステリー小説だから最後に謎を残して終われば
何か奥ゆかしさを残して、それらしくもなるけど、
東野圭吾は謎の正体がチープでも謎は残さない。
バッサリと謎を切り捨てて話を終わらせる。
その清さも魅力的だ。
東野圭吾の魅力B
「社会派からお笑いまで多彩な作品を描く」
東野圭吾は多彩な作品を描く。
本格推理小説からサスペンスや社会派の物語や
お笑い短編集に、娯楽作品やSFモノまで
作品はバラエティに富んでいる。
東野がデビューした数年は推理小説中心だったけど、
推理小説の定石に縛られなくなってからは
何かが外れたように面白くなっていったように思う。
もちろん今でも物語に
殺人事件はよく起こるけど、物語において
犯人当てだけが問題ではない。
この多彩な作品の多さに
東野圭吾は他の作家のように
「また新刊は○○シリーズか・・・」と
ため息が出るようなことがない。
前作・関連作品を覚えていなくていいというのは、
とても気楽なので、社会人にとって
東野圭吾は優しい作家かもしれない(?)。
東野圭吾の魅力C
「登場人物が努力をする」
自分が一番、東野圭吾の作品らしい・・・と思うのが、
物語の登場人物が努力する描写があることだ。
登場人物が会社勤めになったら、
そのまま何も考えずに生活を送るのではなく
仕事の後に、勉強し、資格を取り、
生活を良くしようとする。
学生なら普通に勉強している姿があるし、
女性なら美しく見せるために計算高く行動するし、
犯人・脇役だって勉強し、考え、頑張って生きている。
登場人物の誰にもどこか向上心があり、
その姿には読んでいて高揚するものがある。
考えてみれば東野圭吾はトヨタ系列のデンソーの社員から
先行きの見えない作家に転身して成功したわけで、
東野自身、人生で努力をすることが素晴らしいと
読者に説いているようでもある。
東野圭吾の魅力D
「絶妙のミスリード」
ミスリードとは読者を誤った方向へ思わせながら
読ませていく文章のことだ。
ミステリーの世界では常識的に使われているけど、
東野圭吾もやはり上手く使いこなしている。
短い短編ですら、犯人は近くにいるのに
まったくそう思わせない話を書くから面白い。
東野圭吾最高のミスリードといえば
「容疑者Xの献身」だろう。
このトリックを使ったミスリードには驚いたり、
「すごい」「なるほど」と思ったり、
「主人公よく解いた」と感心したり、
ある人は「せこいトリック」、「ふざけんな」と怒ったり、
賛否があったくらいだ。
東野圭吾の魅力E
「独特の理工系の世界」
とにかく東野圭吾は理工系の話が多い。
東野が理工学部を出てデンソーで働いていたから、
当然といえば当然だけど、犯罪のトリックにすら
工場や理学系のものを使うから面白い。
東野自身も自分以外の作家で
これだけ製造業を物語に使う人は
居ないと言っているけど正しいかもしれない。
世の中には製造関係に従事する人が多いわりに、
意外と小説の物語で使われることは少ない。
理工系に強い東野圭吾に好感を持つ男は
たくさん居るのではないだろうか?
指先を油まみれになりながら働く表現など
深く共感する人も多いはずだ。
東野圭吾の魅力F
「男がしっかり性欲を出す」
これだけ人気作家になっても、
自重せずに東野圭吾が書くのが
男が性欲をしっかり出して女を求めることだ。
それは本当に健全だし、普通だし、
すがすがしい・・・と書くのもおかしいだろうか。
もちろん作品にもよるけど、俗に言う草食系の男は少なくて、
ライトノベルのような押しかけ女房的女子が何人も登場したら、
遠慮無しで全員いただいてしまうような男が東野作品に登場する。
セックス描写も(一部の作品を除いて)やりすぎず、
簡略化しすぎず、ちょうどいい調味料に感じる。
この点が甘くなったら、もはや東野圭吾ではない。
東野圭吾の魅力G
「小説に向かう姿」
東野圭吾は売れっ子の作家だ。
その収入は毎年何億と言われ、もう本を書かなくても
一生暮らせるのではないだろうか?
それでも東野圭吾はデビューから
ほぼ毎年3冊必ず本を出している。
急に売れた作家のように、数年間充電をしたり、
溜まっていた趣味に没頭したりすることはない。
作品のための取材も変わらずしているし、
小説が恐ろしいほど薄くなることはない。
このように作者がしっかり仕事をする姿に
好感を持つ人も多いと思う。
(これからはどうなるかわからないが)
そういえば東野圭吾が
自分は小説家なのでエッセーを書くのをもうやめて、
小説だけに向き合う・・・という話には驚いてしまった。
東野圭吾の魅力H
「サービス精神」
「白夜行」は面白い小説だ。
まさに東野圭吾の代表作だけど、
読んだ人誰もが疑問に思ったシーンがある・・・。
その疑問にこたえたのが「幻夜」だ。
東野圭吾は続編とは明言していないけど
それを強く匂わせる作品で、
あのえげつない裏側を知るようで
自分は笑ったし、安心してしまった。
はっきりいって「白夜行」は大ヒットしたし、
ファンも多いから、世界観を少しも壊す必要はまったく無い。
これまでのように新作を作り続ければいい。
でも少しくらいの批判を受けてでも
このような作品を描いた東野圭吾の
ふところの広さには驚いてしまう。
また東野作品の映像化に関して、
作者が簡単に許可をして、苦言の一言も無いのは驚く。
東野圭吾原作のドラマは結構あるけど、
ファンの中でも「イマイチ」という作品ですら批判はしない。
それにサービス精神といえば
なんといっても笑シリーズや浪速少年探偵団など、
いろんな作品で各所に散りばめられた笑える話は
本当に気持ちがいい。
東野圭吾の魅力I
「予想とは違うラストを用意する。」
いわゆる世間で言われているような
衝撃のラストは東野圭吾の作品には少ない。
それでも話を普通に終わらせない何かが
用意されているのが東野圭吾だ。
東野作品でたまにある犯人が複数なのは、
推理小説としては邪道だけど
どこかで納得する理由が用意されているし、
そもそも現実的に複数の方がよくあることだ。
代表作「秘密」のように延々と語られ、
「それでいいのか?」という終わりも少なくないけど、
東野圭吾を読むとスムーズに終わってしまう作品が
何か物足りなく感じてしまう。
東野圭吾の魅力?J
「関西弁に対する愛着」
東野圭吾の物語では結構
関西弁が出てくる。
はっきり言って小説に関西弁が
出る必要やメリットも無いけど・・・
それでも3冊に1冊は、わざわざ関西弁が
(一行でも)出るから、西日本の人間からすれば
作品に少し愛着ができてしまう。
ある小説で面白かったのはある人物が、
関西出身の人物に会う時は東京でも関西弁だけど、
それ以外では綺麗な標準語でおとなしく喋るという、
その二面性には、えげつないキャラが
すごくにじみ出ていた。
東野圭吾の魅力?K
「図書館に大量にある」
魅力・・・というにはあまりに失礼で、
東野圭吾も本を買わない人を批判するけど、
やはり図書館に東野圭吾の本が大量にあるのは
お金がないけど面白い本を読みたい人間からしたら
助かってしまう。
自分が借りた東野圭吾の本は
人から貰った数冊以外は全部図書館だった。
もちろん最新刊は半年待ちだったり、
一冊借りるのに車を片道30分走らせたこともあるから、
効率を考えたら何冊か買っていくのがベストだった。
もし時間と興味があれば、
東野圭吾の本を
あなたも読んでみてはいかがでしょう?